今世界でインフレに向かっています。世界的な物価の上昇。
背景にはコロナインフレ(コロナ禍による供給不足と、各国政府/銀行によるバラマキ)や、ウクライナ危機(エネルギーや穀物の価格を押し上げ)があります。
今回は、「インフレ時に勝つ投資先は?」をテーマに調べてみました。
インフレ時に強いといわれる金や不動産などの投資対象7選。そして国内株に落とし込んで、例えば商社:三菱商事(株)などのインフレ時に強い業種・銘柄10選を紹介していきます。
目次
- インフレに強いとされる投資対象
- インフレに強い国内株 業種/代表銘柄
- 業種:商社(卸売り) 代表銘柄:三菱商事(株)【8058】
- 業種:不動産 代表銘柄:三菱地所(株)【8802】
- 業種:電力 代表銘柄:東京電力ホールディングス(株)【9501】
- 業種:銀行 代表銘柄:(株)三菱UFJフィナンシャル・グループ【8306】
- 業種:保険 代表銘柄:第一生命ホールディングス(株)【8750】
- 業種:住宅 代表銘柄:タマホーム(株)【1419】
- 業種:鉄鋼業 代表銘柄:住友金属鉱山(株)【5713】
- 業種:石油 代表銘柄:ENEOSホールディングス(株)【5020】
- 業種:木材 代表銘柄:ホクシン(株)【7897】
- 業種:その他 強いブランド+好財務の会社 代表銘柄:三菱ガス化学(4182)
- まとめ
インフレに強いとされる投資対象
1.金
金はインフレ時に強い資産の代表格です。
インフレだけでなく、「有事の金」と呼ばれるように戦争や紛争、不景気など基本的に何かが起こった時に強いと言われてきました。実際に金の長期間チャートを見ても分かる通り、価格は上がり続けています。利上げなどには影響を受けますが、それでも長期の視点では上がり続けています。
各国の金準備の増加、年間採掘量(約3千3百トン)と未確認埋蔵量(約5万トン:実際にはまだあるとされている)の少なさからもしばらくは価格は上がり続けるものとされています。
実際に1970年代に起きたオイルショックでは石油の価格が3倍以上になりましたが、金も3倍以上に跳ね上がりました。「有事の金」の言葉が生まれたきっかけにもなっています。
2.不動産投資
現物資産の代表格である不動産。
不動産投資にも種類があり、土地、家屋、マンションなどの賃貸収入も併せ持った不動産などがあります。
不動産は資産としての価格が変化しにくく、インフレ時には家賃収入も上がります。
賃貸収入は入居者から家賃収入もあるので、好立地の不動産の相対的な価格の上昇+家賃でさらに安定した収益が狙えるのと実質インフレ時は借金の価値も目減りするので組み合わせ次第ではさらなる資産形成が可能になるかもしれません。
実際に消費者物価指数が1950年から2014年までに8倍上がっていますが、不動産価格はそれ以上に跳ね上がっていますが、注意点はやはり立地になるかと思います。
将来的な価値が見いだせない場所はいくらインフレといえど資産形成には注意が必要です。
3.株式などの有価証券
株式もインフレに強いと言われています。
原則として物の価格が上がれば企業の収益が増え、結果としてその企業の株価をあげることになります。企業としても値段が下がるデフレよりも上がるインフレの方が利益が出やすくなります。
実際日本のバブル期における1970年代~1980年代は物価も株価も上昇をみせていました。バブルが崩壊してデフレ経済になり、物価が下がり、株価も下がりました。
注意点としては全ての企業の業績が上がるわけはないので、インフレに強い企業の見極めも大切になります。
個別株を物色して見極めるか、インフレに強い投資信託も選択肢に入ってくるかもしれません。
4.外貨
インフレが円安を招くという言葉がありますが、インフレが進むと円安に動きやすくなります。インフレでは様々なモノの値段があがるのでお金の価値が下がり結果として円安に向かってしまうというものです。
逆に円安になるということは対通貨で逆の通貨は上がるということになりますので、外貨建ての資産を持つことはインフレ時の資産形成になります。
また外貨預金やその国の利子が適用されるため、利息での利益も確保できます。
(FXではスワップがあります。)
例えば対米ドルで1ドル=100円の時に備えていて、その後インフレで円安が続き、1ドル=200円になったとすれば、日本円で持っているよりも2倍の資金を蓄えることができることになります。
ただ、どこの国の通貨を買ってもいいものでもなく、将来的に不安のある国の通貨は対日本円でも下がることがあるので注意しましょう。
5.個人向け国債(10年変動金利型)と物価連動国債
国債もインフレに強いとされている。株や不動産など値下りのリスクがあるが、個人向け国債は元本保証されている(財務省のページに書かれています)商品です。インフレに対応するのは金利の部分になってきます。変動金利であれば市場を反映して金利は増えていきますのでインフレに対応できます。なお固定金利の場合は債券に対する価値がどんどん下がるので、実質的に元本割れとう結果になるので注意が必要です。
また国債の商品には、物価連動国債というものがあります。「全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)」(CPI)の動きに連動して元本と利息が増減します。
物価に連動して動くので、極端な話、物価が2倍になっていれば2倍になって戻ってくる商品になります。物価連動国債ファンドなど投資信託の商品(手数料も比較的安価)もあるので、間接的に買うこともできます。
6.絵画等のアート(芸術ファンド)(車・絵画・時計)
アートに代表される絵画、その他美術品もインフレに強い資産といわれている。特に有名画家の絵画作品となれば、それは顕著である。市場である程度評価が得られている作品は値下がりも起こりにくい。だた個人ではそうそう買えるものではなく維持、メンテ等も考えるとそのハードルも高いのも事実。将来性を見出した投資になることも。最近では、ANDART(アンドアート)という共同保有プラットフォームができ、1万円から購入と売買ができる市場が出来上がったので、参入してみるもの面白いと思います。
また、絵画以外でもフェラーリなどに代表される高級車やロレックスなどに代表される高級時計もインフレに強いとされ、実際に高級時計では2021年に価格が3%~8%以上値上がりしているものが多く、インフレ率と近い値になっている。
7.コモディティ投資
コモディティとは、貴金属やエネルギー、農産物への投資のことを指します。
(上記であげた金も含まれます。)
こちらはどちらかというとインフレの先行指標と言われている。取り分け原油は現代の石油依存社会の象徴とされ、原油が上がると農作物の生産コスト上昇(トラクターなどの燃料等)につながり、結果として穀物の価格高騰を招き、商品高につながっていく。それによりインフレ圧力が強まっていきます。
インフレを予測するうえで大事な指標といえますが、だからこそインフレに強い商品であることも間違いないです。
価格の影響の原因となりうるので、当たり前ですが、その分価格予測が難しいのも特徴になります。コモディティから価格が落ち着いたり落ちたりする時がありますのでその動向には注意が必要です。
インフレに強い国内株 業種/代表銘柄
大きな区分で「投資対象7選」を見てきましたが、ここからは日本株に絞ってインフレ時に強い業種・銘柄を見ていきたいと思います。
業種別に代表銘柄を10選してみました。
(チャートは2022年4月26日時点のものとなります。)
業種:商社(卸売り)
代表銘柄:三菱商事(株)【8058】
天然ガスや原料炭、原油や鉄鉱石の価格上昇が利益を押し上げ要因となる商社。
三菱商事は、総合商社大手・三菱グループ中核・原料炭等の資源をメインとしています。
資源価格が高止まりが長期化すれば、株価もさらなる上昇の可能性もあります。
業種:不動産
代表銘柄:三菱地所(株)【8802】
インフレ時は価値の下がる現金資産より、実在する現物資産へと投資が集中。その代表となる不動産は人気になりやすいです。
三菱地所(株)は、東京・丸の内に賃貸ビルを多く持ち、大手町の再開発にもかかわっている総合不動産。
インフレに強い不動産の条件には、「立地条件」があります。立地条件が良ければ、企業や住宅需要が高まる為、
インフレによる物価上昇にも左右されず、株価上昇も期待できます。
業種:電力
代表銘柄:東京電力ホールディングス(株)【9501】
資産防衛の手段の1つとして、電力会社の株を購入することは有効。
東京電力は、電力首位。インフレ時には、景気の影響が比較的少ないディフェンシブ銘柄として、資金が流入する傾向にあります。
電気や水などの社会インフラは、国民の必需品である為、料金の値上がりが比較的しやすい業種となります。
業種:銀行
代表銘柄:(株)三菱UFJフィナンシャル・グループ【8306】
金融業界は、金利上昇がストレートに影響。利ザヤ拡大などのメリットを得られます。
国内の金利上昇時期はまだ先の可能性もありますが、海外は金利上昇の流れとなっています。
その中で三菱UFJフィナンシャル・グループは、海外展開が進んでいる為、海外事業の収益の方が大きく伸びる可能性が高いです。
金利は貸出金利のほうが先に上がるのが一般的で、金利上昇局面で収益増となりやすいです。
業種:保険
代表銘柄:第一生命ホールディングス(株)【8750】
保険会社は契約者からお金を集めて運用し、その収益を将来の保険料の支払いや会社の利益とする為、インフレのメリットが得られます。
第一生命は生保大手。契約者は約800万人。M&Aで海外事業も急拡大しております。
10年変動国債など金利が上がれば、運用には大幅なプラスになりますので、インフレに強いと言えます。
業種:住宅
代表銘柄:タマホーム(株)【1419】
インフレに強い資産とされている代表の不動産。住宅価格も物価の上昇により、値段が上がるので、インフレの影響を受けにくくなります。
タマホームは、ローコスト系の注文住宅会社。首都圏郊外や地方を中心に展開しています。
また、住宅購入時にほとんどの人は住宅ローンを組みます。借金は固定金利等によりますが、インフレによってお金の価値が下がれば、借金も実質的に縮小する傾向にあります。
業種:鉄鋼業
代表銘柄:住友金属鉱山(株)【5713】
一般的に素材等の原材料などを扱う「川上産業」はインフレ耐性が強いとされています。
住友金属鉱山(株)は、ニッケルや銅などの非鉄金属と電子材料が2本柱。資源開発・製錬に重点投資しています。
鉄鋼業では、主原料価格の上昇を反映して、取り扱う材料価格の引き上げを実施できる為、売上拡大・株価上昇する可能性が高くなります。
業種:石油
代表銘柄:ENEOSホールディングス(株)【5020】
原油価格が上昇する時は、他の商品先物指数も上昇傾向にあり、インフレが進みやすいと言われています。
ENEOSホールディングスは、17年4月に東燃ゼネラルと経営統合、国内シェア5割の石油元売り首位。さらに銅など非鉄事業も行なっています。
2022年3月には、「今期連結営業利益見通しを7400億円と従来計画の4700億円から引き上げる」と発表。まさに、原油価格の上昇がそのまま寄与しやすい業種・セクターといえるでしょう。
業種:木材
代表銘柄:ホクシン(株)【7897】
コモディティ価格の上昇を受け、国際的な木材価格も上昇する傾向がある為、インフレに強い木材関連株。
ホクシン(株)は、木材チップを接着剤で固めた繊維板(MDF)の専業メーカーとして首位。住宅建材用や家具用が多い。
2021年の「ウッドショック」の再来との思惑もあり、ウクライナ侵攻やコロナの影響が長期化すれば、更なる木材価格上昇もあります。
業種:その他 強いブランド+好財務の会社
代表銘柄:三菱ガス化学(4182)
最後にその他インフレに強い要因として、強いブランド+好財務の会社があります。
値上げしても顧客が離れない信用のある製品を持つ会社は、価格転嫁をしやすい為、利益率を改善することが出来ます。
また、インフレによる金利上昇の局面において、借金の金利負担が大きくなる為、借金過多の会社は収益を圧迫します。
三菱ガス化学は、メタノール生産で世界シェアが高い。半導体やスマホ向け材料に強みを持つ。自己資本比率も良好。
まとめ
以上、インフレ時に強いとされる「投資対象7選」と「強い業界・銘柄10選」について紹介しました。
現在世界ではコロナや紛争でその要因は様々ですが、米国や欧米を中心にインフレに向かっています。
問題は各所得ベースがあがるかどうか。物の高騰を招き、それが経済循環を呼び込み給料も上がっていく形になれば経済成長もありえますが、価格高騰のみの場合はスタグフレーションを起こしかねません。
少しずつの物価上昇と経済成長が理想ですが、必ずしもそうはいきませんね。
現在起こっているインフレに対してはどこに投資が正解でしょうか?個人的には、「外貨」・「物価連動国債」・「コモディティ投資」・「業種:保険」あたりが今後もおもしろいのではないかと考えております。
「投資対象7選」と「強い業界・銘柄10選」が、少しでも参考になればと思います。