もはや一部指標では先進国とそん色がないくらいの中国。近年破竹の勢いで経済成長を続けてきました。
今や中国経済の動向が世界状況に影響を与えるインパクトは日増しに大きくなっています。
その成長はどれだけ進むのか。
今後中国経済に影響を与える事情をそれぞれ、上がる理由、下がる理由で5つ挙げてみました。
目次
中国株が上がる理由5選
1.将来世界第1位の経済大国
中国は世界第2位の経済大国で、2030年位までには米国を抜いて世界第1位になる可能性が予測されています。
世界のビジネスにおける中国企業の台頭は、世界の企業総収益ランキングからも見られます。
2020年「フォーチュン・グローバル500(世界の企業の総収益ランキング)」では、
シノペック(国営石油会社)と国家電網(電力配送会社)がトップ3に入り、500社全体では米国より3社多い合計124社がランクインしているようです。
他の予測でも、
・英シンクタンク(経済ビジネス・リサーチ・センター):当初予測よりも5年早い2028年までに、アメリカを抜いて世界最大の経済大国になるとの報告書を発表
・米電気自動車テスラ イーロン・マスク(CEO):中国の経済規模が将来的に米国の2~3倍になる可能性があるとの見方
などもあり、中国株は中長期的に魅力ある市場である事は間違えなさそうです。
短期的な下げは、むしろ買いのチャンスで、長期的な上昇トレンドとなると予測されています。
2.北京五輪・中国共産党の党大会
中国では現在、環境規制や北京五輪へ向けて工場等の操業制限が行われています。
しかし、北京五輪終了後は、工場の操業が戻り、生産の回復が見込まれるとのことです。
また、2022年秋には、中国共産党の党大会が開催される予定です。
党大会は5年に一度の開催となる中国共産党の最高決定機関であり、体制や基本方針など、様々な重要事項を議論・決定が行われます。
党大会が行われる年は、中国株のパフォーマンスが良いと言われています。
また、党大会を前にも、政府は党大会に向けて景気やムードを良くすることを試みる傾向があります。
ゴールドマン・サックス・グループは2021年11月に、中国株は向こう1年で上昇すると予想。レポートでは「党大会を前に安定を確保しマクロ面のストレスを和らげる若干の政策緩和が、中国株の評価見直しのきっかけになると考えている」と説明しております。
北京五輪からの良い流れのまま、企業の生産回復・株高への政策緩和、党大会への期待など、中国株の上昇の流れは出来てきています。
3.共同富裕
「共同富裕」は、中国株にとって注目のテーマとなっております。
貧富の格差縮小と社会全体の豊かさを求め、第2の百年目標である2049年(建国百周年)までの長期的な国家戦略となります。
中等収入層を8億人へ目指し、現在の中等収入層が約4億人から8億人へのプラス4億人を引き上げるイメージとなります。
ちなみに、中等収入層とは年収約6万~50万元(約100万~800万円)を指し、約6億人は低所得者層の年収約1万元(約20万円)となっております。
短期的には課題が多く、株価の下げ要因にも働きますが、長期的にみると中国の巨大経済大国への大きな魅力となります。
中等収入層の爆発的な増加に伴う、大衆消費の拡大やプチ贅沢志向による巨大なマネーの流れは、中国株にとって大きなプラスのインパクトを持ちます。
日本の人口の10倍以上となる、14憶人の中国市場。この絶対数の違いで、「共同富裕」が上手く進んだ場合は、どれほどのプラスになるか想像が出来ないレベルです。
4.景気は底打、回復過程へ
2022年、中国の景気は、底打ち回復との見方が多いです。
・米モルガン・スタンレー:「2022年に上昇サイクルに入るとの見通し」
過度の引き締め政策から、緩和へのスタンスにシフトしていき、景気回復の為の政策行動を続けていくとの分析となります。
・日本経済新聞:「中国経済、先行指標に底打ちの兆し」
中国の先行指標の1つの「クレジット・インパルス」に底打ちの兆しが表れている様子。(クレジット・インパルスは、値が高いと、民間への資金供給が増えていることを示す指標)中国の政策が景気刺激策をとると上昇します。その為、中国株についても同様、底打ち・回復の期待が高まっております。
・ダイヤモンド・ザイ:「景気は底打ちしつつあり、これから回復過程に入る状態」
「企業景況感指数」は2021年11月分岐点となる50を上回る状況。また、不動産融資規制の緩和や環境規制の緩和など、一部の政策を転換し、経済成長への改善を進めています。
5.新型コロナウイルス(オミクロン株)の終焉
経済活動の大きな抑制となっている新型コロナ、2022年にはコロナ(オミクロン株)が終焉となる予測が揃ってきております。
1つ目は、過去のパンデミック期間は、2年であることです。
スペインインフルエンザ:1918~1919年
アジアインフルエンザ:1957~1958年
香港インフルエンザ:1968~1969年
となっており、新型コロナウイルスも2022年にて2年経過します。過去のパンデミック期間の最終段階へほぼ近づいた状況となります。
2つ目は、オミクロン株により、「感染力が高く、かつ重症度の低いウィルス」となったことがあります。たとえばスペインインフルエンザは世界中に広まるほどの感染力を持った後、毎年の弱いインフルエンザへと変わっていったようです。広く・弱く蔓延することで、ウィルスの脅威が大きく減少し、終焉するということのようです。
また3つ目として、全人口のワクチン接種率70%を達成となることです。WHOは、2022年半ばまでにコロナワクチン接種を完了する戦略に着手しており、集団免疫はコロナ終焉へのキーポイントとなります。
合わせて、コロナ飲み薬が使われ始めコロナによる重大なリスクを大きく軽減させる可能性が見えつつあります。
上記の理由により、新型コロナによる、経済のマイナス影響がほとんどなくなれば、世界経済また中国経済においてプラスのインパクトは大きいと予想されます。
中国株が下がる理由5選
1.不動産大手の中国恒大集団がデフォルト危機
中国不動産開発大手の中国恒大集団は中国不動産業界第2位の規模を誇ります。
この大企業が約33兆円もの負債を抱えてデフォルト(債務不履行)危機に陥っています。
この出来事は中国だけではなく、世界の株式市場に影響を及ぼすほどの問題になりました。
今中国は不動産バブルがはじけそうな状態です。
日本のバブルと比較しても1990年の東京都でマンション平均価格が18倍だったのに対し、中国では北京市でおよそ55倍まで高騰しているとのこと。もはや住む前提ではなく投資前提としての購入が蔓延り、政府も規制に乗り出しています。
このバブルがはじけてしまうと何十兆円というお金が失われる可能性があり、中国もとい世界にも大きな経済ダメージをこうむることになります。
2.電力不足
現在中国は深刻な電力不足に陥っています。
異常気象による主要石炭産地での洪水被害、
コロナが落ち着きつつある中、人々の生活に活況が戻り始め、需要の過剰復活、
グリーン発電への過度の依存
追い打ちをかけるような世界的な石油や天然ガスの価格高騰
また中国国内における石炭価格の上昇
など様々な要因から電力不足に悩まされ、
地方政府は電力の供給を抑制する動きがみられ、停電も頻繁に起きている。
工場の生産を停止する省などもあり、中国経済にダメージが蓄積される可能性も否めない。実際全国の約3分の2の地域で電力供給の制限が実施される異常事態となっています。
3.共同富裕
上がる理由にてありました「共同富裕」ですが、下がる理由にも挙げられます。
中国の習近平国家主席が「共同富裕」を提唱しました。
格差社会を是正し、中国全体の富裕レベルを上げていく様々な施策を打ち出していくものと思われます。
具体的には、所得の再分配の制度の構築(社会保障や税金などの見直し)、
高所得者への調整(低所得者や社会への還元)、財産権や知的財産権の保護、農村民の優遇と還元などが挙げられています。
特に不動産税や相続税の導入は現実的な施策候補として挙がっています。
不動産税はその名の通り、先の中国恒大集団とも相まってさらに中国の不動産市場の冷え込みを加速させる可能性も否めない状況となっております。
また富裕層からの反発も少なからずありますので、共同富裕自体に多少のリスクはついて回るものかと思います。
4.利下げ
2021年12月20日、中国人民銀行は政策金利「最優遇貸出金利」の1年物の金利を0.05ポイント引き下げて、3.8%にしました。
欧米諸国などで利上げ予測が立つ中での利下げの動きになっています。
この利下げは、2020年4月以来となります。
上記で挙げた不動産バブルの崩壊予兆やコロナウィルスでの経済停滞や大規模停電などで中国企業の業績悪化は避けられないものとみられ、利下げによる金融緩和で景気減速へのブレーキをかけたいとの思惑が見て取れます。
対ドルベースの出の人民元高も進んでおり、世界に対する中国経済の成長鈍化を促進させる材料になっている見方もできます。
5.規制強化
様々な分野に対しての規制強化が強まっています。
代表的な例を挙げると、
・IT企業への規制強化
アリババ集団をはじめ、巨大IT企業に対する規制を強めており、具体例としては、アリババに対して、独占禁止法違反で約182億元の罰金や米国に上場したネット企業3社に対して、審査の義務付けなどを行いました。
・教育産業への規制強化
中国で急成長している個別学習指導生産業への規制として、教育費を引き下げ、出生率を上げることを目標に週末の授業禁止や未就学児向けの学習サービスの禁止、21時以降の未成年向けライブ配信の中止などを行っています。
・ゲーム専業への規制強化
18歳未満のネットゲームの利用に関する規制の強化している。新規ライセンスの取得凍結。ゲームプレイ時間の規制、ゲームへの実名登録を義務化などを行う。その影響として、広告・出版を含む中国ゲーム関係企業の約1万4千社が登録を抹消するなどの事態が起きている。
いづれの施策も短期的に経済活動を抑制する動きとなっています。
まとめ
それぞれ5個ずつ挙げてみました。
共同富裕などはどちらにも挙がっており、その政策の注目度がうかがえます。
単純に読み比べてみると、長期的には上がりそうな予想が立てることができますが、
昨今の世界情勢から戦争に突入する可能性も否めないため、慎重に見極めることが必要になるかもしれません。
以上、中国株が上がる理由、下がる理由を5つずつ挙げてみました。
<クレジット>
丸岡ジョーさん