【比べてみた】東京五輪後の株価「上昇5つの理由」と「下落5つの理由」

紆余曲折を経て、ようやく開かれたオリンピック。1年延期、緊急事態宣言下、無観客開催と従来までのオリンピックとは違った開催の形になりました。反対の声も大きい中、半ば強引に開催に持って行った感がありますが、いざ開催されると様々なドラマ、日本のメダルラッシュなど好影響もあったのではないかと思います。
今後注目されるのは、やはり東京オリンピック後の株価動向です。異例のコロナ禍での開催となり、今までの開催国の動向が当てはまるのか、過去の事例と日本の状況を元に景気、株価などが上がる理由と下がる理由をそれぞれ5つ挙げて考察してみました。

景気回復、株価上昇の理由5選

1.不動産の活用

オリンピック時に整備された高速道路などのインフラ、競技場などはその後も日本の人々の生活に恩恵を受けることになると思います。無駄な競技場などはあまり立てていないのでリオデジャネイロの二の舞になることは少ないと思います。
オリンピック後に指定管理者制度などを導入し施設の効率的な運営の策定などしています。
また晴海フラッグと呼ばれる選手村としてつかわれた施設やマンションは開催後分譲として売り出され、商業施設や教育施設を充実させ、一つの町エリアとして栄えるかもしれません。

2.建設需要の維持

オリンピックの建設需要が終わり建設業界が落ち込むというものだが、それほど影響はないように思える。あくまでオリンピックは東京都周辺のことであって、地方も含めてそれほど落ち込むわけではない。日本では、各種インフラ設備の老朽化が進む中、これまでも自然災害から国土を守る「国土強靭化政策」が重要な政策課題として取り組まれました。これによる水害、治水対策による効果、また今後に控える、IR(統合型リゾート・カジノなど)や大阪万博に向けた需要もあるので、落ちるとは考えにくいです。

3.コロナウィルスによるダメージ

そもそもコロナウィルスによる経済ダメージがオリンピック以前に大きい。
すでにかなりの経済ダメージを受けている中、これにオリンピックのダメージがさらに追加されるとは考えにくく、1年前の延期の時点で経済損失のダメージも含めて織り込み済みと見ることができる。
さらに後押しがあると考えるのであればオリンピック後の新たなパンデミックの発生によるダメージの方が大きい影響を及ぼすかもしれないが未知数である。

4.ワクチンパスポートでの観光が再開

ワクチンパスポート(ワクチン接種証明書)による観光客受け入れの動きが世界で始まっている。欧州では動きが早く、夏の観光へ向けてプロモーションの動きが出ている。
フランスでは、日本からの渡航者はワクチン接種者であればPCR検査なしでの入国を認めており、日仏間の航空便も復活しつつある。
日本もこの動きを取り入れることにより、海外観光客の受け入れ態勢を整え、観光産業の復活が狙えます。

5.GDPから見る過去開催後の成長率

過去開催国(近年1992年バルセロナ大会から)でのオリンピック後の各国経済成長率を見てみると、開催翌年には数値が落ちていることが多いが、2年後には回復しておりダメージが続くとは考えにくい。
さらに落ちている開催1年後をみてみるとリーマンショック、ITバブル崩壊、通貨危機などが起きており、直接オリンピックが要因とは言えないものが多い。
特に悪かったバルセロナ(1年後-1.3%)も2年後には+2.3%。リオデジャネイロ(開催年-3.5%)も1年後には+1.0%とどちらもプラスに転じている。
オリンピックが直接開催後の不景気まで影響を及ぼしているまでは言えないデータとなる。

景気後退、株価下落の理由5選

1.五輪開催で感染拡大、経済回復の遅れに

代表選手が新型コロナウイルスに感染し大会を棄権、また有力選手のPCRの検査で陽性が確認されたため欠場など連日ニュースにて発表がある状況です。
また選手団関係者や五輪警備の方による共用スペースでの感染確認など、感染や濃厚接触者は増えています。
日本全体をみても、緊急事態宣言・オリンピック開催のなかでも新規感染者が急速に増加している状況です。
オリンピック開催の影響による感染拡大となれば、日本経済回復の遅れやコロナ対策費用増加、海外投資家失望感など、日本経済の致命傷になる可能性がある。

2.オリンピック開催後の景気ジンクス

一般的にオリンピック前は関連企業の業績拡大や観光客増への期待などから株価は上向き、オリンピック後の株価は落ち着く・または悪化すると考えられています。
「ギリシャ危機」の時にも、急速に国内景気が浮揚したが、オリンピック後巨額の財政赤字に陥り、ギリシャ危機に繋がったとの見方もあります。
オリンピックを一種の公共事業ととらえると、前倒しで国や企業が投資した分、その反動が出てくるものと考えられます。また合わせて、今回は異例の「無観客開催」。
観光客の壊滅状態や、国民の消費の盛り上がりも少なく、期待されていたそもそものオリンピックの経済効果も小さくなっています。

3.五輪終了後に不動産価格が暴落

「2021年東京五輪が開催までは不動産価格が上昇し、五輪終了後に不動産価格が暴落する」といった声が時々聞かれます。
オリンピックのような大規模なイベントは、不動産需要を生み出し、価格を大きく上昇させますが、ただし、このような形で上昇した不動産価格は、イベント終了後に暴落する恐れがあるといわれています。
2013年にオリンピック開催地が東京に決まってから、首都圏不動産市場は上昇を続けてきています。
国内富裕層・海外投資家が五輪終了後に国内の不動産価格にピークが来ると予想された場合、一気に不動産の売却が行われる可能性もあります。
またオリンピック直後ではないものの、長期的な日本の人口減少や、リモートワークによる利便性の高い物件のニーズ減少など、不動産の価格にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。

4.海外観客受け入れ中止での経済損失

2021年の東京オリンピックが無観客開催の場合の経済的損失額が、約2兆4,133億円にのぼるとの事です。(関西大学の宮本勝浩(みやもと かつひろ)名誉教授による試算より。)
海外観客が来たらホテルや飲食、グッズ、チケットを買ってくれるが、それがほとんどない状態となっております。
緊急事態宣言も重なり、ホテル等では壊滅的なダメージを受ける企業もあり、全体的に失業者が約4万人程増加する試算も出ております。(野村総合研究所の木内登英(きうち たかひで)氏の試算より)
また、海外観客受け入れ中止により、観光リピート需要も見込めない状況で、「オリンピック時に東京(日本)に来て気に入り、その後のリピート観光」といった好循環の流れも見込めない為、
更なる日本経済へのダメージとなる可能性があります。

5.そもそもの流れが不景気

日経平均やNYダウ、各国株価指数はここ10数年上がり続けています。東京オリンピックの前にコロナパンデミックが起きました。その前は長期景気の終焉を迎えると散々言われてきました。終焉のサインがたくさん出てしましたが、コロナパンデミックによる世界の財政出動のジャブジャブ政策で強烈な下げからの無理やりのリバウンドで指数景気を長引かせている状態ですが実体経済は不景気の流れが出ています。何かのタイミングでいつ崩れてもおかしくないです。ワクチンが行き届き、財政の縮小の目途が見え始めた時点で本当にクラッシュしてもおかしくはありません。無理やり開催した東京オリンピック。だましだましの政策の終焉がオリンピック後に来ても不思議ではない状態かもしれません。

まとめ

上がる理由、下がる理由をそれぞれ5つ挙げてみました。正直どちらに動いてもおかしくない状態だと思います。しばらくは現状のラインをキープする可能性が高いかもしれません。今の日本や世界はそれくらい揺れている。マクロでみると東京オリンピック動向よりコロナパンデミックの動向の方が株価は連動する状態にあるかもしれません。この状況下では下がる場合は世界動向、上がる場合は日本の自力にかかっているかと思います。

以上、東京オリンピック開催後の経済動向予測をしてみました。

<クレジット>
fujiwaraさん